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これから論文を書く若者のために

これから論文を書く若者のためにを読みました。

著者は酒井聡樹さん。東北大学の先生だそうです。

本書のテーマは、いかにして良い論文を書くのか、というところにあります。なぜ論文を書くのか、何をどう書けばいいのか、どうやって査読をパスするのか、といったことが非常に丁寧に解説してあります。

私も研究者の端くれでして、これまでに何十報かの論文を出してきました。ですから、論文の書き方は一応知っているつもりだったのですが、本書に書かれていることはとても有益でした。今まで自分がいかに適当に論文を書いてきたのか、ということを痛感しています。

本書の中で一番印象に残ったのは、第一部の「論文を書く前に」です。そもそも論文というのは何か、という話から始まって、なぜ論文を書くのか、ということが分かりやすく説明されています。

もちろん、私としては一応知っていることが多かったのですが、長いこと研究者をやっていると、こういう基本的なことは忘れてしまいがちです。でも、基本というのはやっぱり大事です。つい惰性で書いていたり、色々な事情から義務感で書いていたり、嫌々ながら書いていたり、といったことが往々にしてあるわけですが、それではいけない、という思いを強くしました。いわゆる初心にかえるというやつです。これを機に、もっと面白い論文を出せるように頑張らねば、と思いました。

第二部以降は、論文を書く際の技術的なことが書かれています。私もそれなりに経験を積んでいますので、一通りのことは知っているのですが、それでもやはり参考になる記述がたくさんありました。こういったことというのは、あまり人に教えてもらう機会がなく、独学で身に付ける人が多いと思うのですが、私もそうでした。

なので、自分では当たり前だと思っていることが、実は常識はずれなことだということがたまにあります。本書に書かれていることがすべて正しいというわけでもないでしょうが、私よりも経験豊富な先生が書かれているのは事実です。今までのやり方を変えるのは簡単ではありませんが、本書の内容を参考にして、少しでもいい論文を書けるように工夫をしてみようという気持ちになりました。

ということで、この本はここ最近読んだ本の中では一番役に立つものでした。あと10年くらい前にこの本に出会っていれば、私の論文リストももう少しいいものになっていたと思います。研究者はもちろん、大学生や大学院生、企業の技術者の方たちなどにもおすすめの一冊です。